危険物取扱者試験に関する情報をまとめています。
これから受験を考えている方、勉強中の方、合格した方に役立つ内容です。
危険物取扱者試験の概要
危険物取扱者は、消防法に定められた危険物を取り扱うために必要な国家資格です。
一定以上の危険物を貯蔵・取り扱う工場、ガソリンスタンド、タンクローリーなどの施設には、危険物取扱者を置かなくてはいけません。
危険物取扱者試験は、指定試験機関である一般財団法人 消防試験研究センターにより実施されています。
受験会場・日程について
試験は各都道府県のいくつかの市町村にて、年に複数回行われています。
受験会場は工業高校や大学などで、日程によって異なります。
詳細は消防試験研究センターのHPにて確認してください。
危険物取扱者試験は、現住所や勤務地に関係なく、全国どこでも受験することができます。
試験区分について:甲種・乙種・丙種
危険物取扱者の資格は、取り扱うことのできる危険物の種類に応じて区分されています。
種類 | 取り扱うことのできる危険物 |
甲種 | 第1類から第6類まで全ての危険物 |
乙種 | 第1類から第6類のうち取得した類の危険物のみ |
丙種 | 第4類のうち、特定の危険物のみ |
受験資格は?
乙種および丙種については受験資格はありません。
甲種については、以下のいずれかの受験資格が必要です。
- 大学等において、化学に関する学科等を卒業又は課程を修了
- 大学等において、化学に関する授業科目を15単位以上修得
- 乙種免状の交付後、危険物取扱いの実務経験が2年以上
- 乙種免状のうち、①第1類または第6類、②第2類又は第4類、③第3類、④第5類の交付
卒業証明書や学位記、成績証明書などの証明書類が必要になります。
大学等への申請に時間がかかる場合もあるので、甲種受験に必要なら早めに用意しておきましょう。
試験の申込方法は?
書面申請と電子申請があります。
電子申請が可能な試験種別は次の通りです。
- 証明書添付が不要な乙種及び丙種
- 乙種4種類以上の既得免状を受験資格とする甲種
- 過去3年以内に受験した試験の再受験
なお、併願受験(同一会場にて午前・午後の試験を受験)及び複数受験(乙種の複数同時受験)については、電子申請は不可となっています。
書面申請の場合
最寄りの消防署や役所等で受験願書を入手し、必要な書類を揃えて消防試験研究センターに郵送又は持参して申請します。
試験手数料の払込、書留送付などの手間がかかります。
書面申請では、試験日の約1週間前に受験票が郵送されてきます。
電子申請の場合
消防試験研究センターのHP(電子申請のページ)から申請します。
受験料をクレジットカードで決済できるので便利です。
受験票はメールで送られてくるので、ダウンロードして印刷します。
受験料はいくら?
試験を受けるにあたって、以下の受験料がかかります。
甲種 | 乙種 | 丙種 |
6,600円 | 4,600円 | 3,700円 |
試験の難易度
危険物取扱者試験の内容、難易度について紹介します。
試験の内容は?
危険物取扱者の試験科目は大きく3分野に分かれています。
- 危険物に関する法令:法令
- 物理学及び化学:物化
- 危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法:性消
なお、2番目の試験科目について、乙種の場合は「基礎的な物理学及び化学」、丙種の場合は「燃焼及び消火に関する基礎知識:燃消」となっています。
問題数及び試験時間は下表の通りです。
種類 | 試験科目 | 問題数 | 試験時間 | 問題形式 |
甲種 | ① 法令 | 15問 | 2時間30分 | 五肢択一式 |
② 物化 | 10問 | |||
③ 性消 | 20問 | |||
乙種 | ① 法令 | 15問 | 2時間 | |
② 物化 | 10問 | |||
③ 性消 | 10問 | |||
丙種 | ① 法令 | 10問 | 1時間15分 | 四肢択一式 |
② 燃焼 | 5問 | |||
③ 性消 | 10問 |
甲種ではすべての類の危険物が出題されるため、③性消の問題数が多くなっています。
試験はいずれもマークシート式の筆記試験です。
合格基準は?
危険物取扱者試験の合格ラインは、各科目の成績が60%以上であることです。
すなわち、正答率が6割に満たない科目がひとつでもあれば不合格となります。
よって、どの科目も満遍なく学習して試験に臨む必要があります。
科目免除について
乙種および丙種の試験において、一部科目の免除を受けることができます。
例えば、乙種免状の交付を受けている場合、他の乙種受験時に①法令と②物化の全部が免除になります。
この制度を利用することで、乙4保有者は他の乙種を取得しやすくなります。
甲種試験には科目免除はありません。
なお、危険物取扱者試験には、科目合格の制度はありません。
なので、一度の試験ですべての科目に合格する必要があります。
合格率はどれくらい?
危険物取扱者試験の受験者数と合格率の推移(2011~2020)をグラフにしました。
消防試験研究センターより公開されていた、受験者数と合格者数のデータに基づいて作成しています。
甲種の場合
受験者数は年間約2万人で、合格率は30~40%程度となっています。
甲種には受験資格があるため、大学等で化学を学んだ人や乙種を取得済みの人、実務経験を有する人など、受験者のレベルは比較的高めです。
その中で3人に1人しか受からないということで、そこそこの難易度であると言えるでしょう。
乙種の場合
危険物取扱者の中でも最もメジャーな乙種4類については、年間約20万人もの受験者がいます。
乙種には受験資格がないので、様々な人が受験しています。学校や会社の指示で受けているだけでモチベーションの低い人も含まれていることを考えると、実際の難易度よりも合格率は低めに出ている可能性が高いと思われます。
また、乙4以外の乙種については、各類1~2万人程度の受験者で、合格率は約70%と高めです。
すでに乙4を取得しており、科目免除を受けている場合が多いためでしょう。
丙種の場合
受験者数は年間約3万人で、合格率は50%程度となっています。
丙種は取り扱うことのできる危険物の種類も少なく、試験もあまり難しくないので合格率は高めです。
なお、2022年3月時点では、試験の受験者数と合格者数は公開されていないようです。
必要な勉強時間は?
合格のための勉強時間については諸説ありますので、経験に基づいて私見を述べます。
私が乙種及び甲種の合格に費やした時間は
- 乙種4類:約1か月、約50時間
- 甲種:約2か月、約80時間
乙4は1問ミス、甲種は満点で合格しました。
乙4については何の予備知識もない状態からのスタートでした。
甲種については、乙4取得から約1年後ということで、若干の予備知識がある状態からのスタートでした。
なお、物理・化学については基礎知識を有しており、さらっと復習した程度で特に勉強していません。
理系の大卒以上など、特に高校化学を学びなおす必要がない方であれば、上記時間で十分すぎるくらいだと思われます。
一方、物理学・化学の学び直しが必要な方であれば、上記時間に追加で考える必要があるでしょう。
- 基本的な物質の化学式を覚えているか(硝酸、エタノール、酢酸など)
- 化学反応式が書けるか
- モル計算ができるか
- pHの計算ができるか
- 酸化・還元反応がわかるか
- イオン化傾向を覚えているか
- 有機化合物の分類、命名規則などを覚えているか
- 熱力学の関係式を知っているか
- 簡単な電気の法則を知っているか
これらの知識に不安がある方でも、本サイトで解説していきますのでご安心を。
受験後
合格発表はいつ?
試験の合否は、試験日から2~3週間後にわかります。
都道府県によって異なるので、詳細はご確認ください。
消防試験研究センターのHP上に合格者の番号が掲示されるほか、郵送にて試験結果が送付されてきます。
試験の成績を知ることはできる?
郵送で届く「危険物取扱者試験結果通知書」に成績が記載されています。
免状の申請について
試験に合格したら、危険物取扱者免状の交付申請をすることができます。
試験結果通知書とセットになっているので、必要事項を記載し、2,900円分の収入証紙を貼付して提出します。