気体と圧力の基礎|ボイル・シャルルの法則と計算

気体を押し縮めたり、温めたりすると、圧力や体積はどう変わるのでしょうか。大切なのは、何を一定にしているかを確かめることです。

この記事では、現象を理解してから法則の式を使い、変化後の圧力や体積を求めます。気体の量は一定とし、漏れ・化学反応・状態変化は起こらない場合を考えます。気体は理想気体として扱います。これは、実際の気体の性質を簡単な法則で表すためのモデルです。高い圧力や液化に近い条件では、実際の気体との差に注意が必要です。

1.圧力と絶対圧力

圧力とは、単位面積あたりに働く力です。気体の粒子は動き回って容器の壁に衝突し、壁を押す力を及ぼします。

圧力の単位にはPa(パスカル)を使います。1kPaは1,000Paです。1気圧(1atm)は101,325Paで、約101.3kPaです。

圧力には基準の違いがある

絶対圧力は真空を基準にした圧力、ゲージ圧は周囲の大気圧を基準にした圧力です。

気体の法則に使うのは絶対圧力です。たとえば、この例では大気圧を100kPaとします。ゲージ圧が200kPaなら、絶対圧力は300kPaです。

絶対圧力=ゲージ圧+大気圧

ゲージ圧が0のときは、真空ではなく、周囲の大気と同じ圧力です。

2.温度はKで考える

気体の法則で温度の比を求めるときは、℃ではなく絶対温度K(ケルビン)を使います。

絶対温度の値=セルシウス温度の値+273.15

20℃は293.15K、40℃は313.15Kです。したがって、「20℃から40℃にすると温度が2倍」として計算できません。

以下の例題では計算を分かりやすくするため、問題の指定に従って273.15を273に近似します。0℃を273K、27℃を300Kとして扱います。

3.温度一定:ボイルの法則

同じ量の気体を、温度を一定に保ちながら圧縮すると、体積は小さくなり、圧力は上がります。体積を大きくすると、圧力は下がります。

この関係をボイルの法則といい、圧力と体積の積が一定になります。

P₁V₁=P₂V₂

Pは絶対圧力、Vは体積です。添字1は変化前、2は変化後を表します。体積が半分になれば、圧力は2倍になります。

温度が同じなら、粒子の平均的な運動の激しさは変わりません。同じ数の粒子を小さな空間へ閉じ込めると、壁の単位面積に衝突する回数が増え、圧力が上がります。

例題:圧縮後の圧力

絶対圧力100kPa、体積6Lの気体を、温度一定で2Lまで圧縮しました。変化後の圧力を求めます。

100×6=P₂×2

P₂=100×6÷2=300kPa

体積は3分の1なので、圧力は3倍です。圧縮したのに圧力が下がる答えになったら、式の立て方を見直しましょう。

4.圧力一定:シャルルの法則

動くピストンなどによって圧力を一定に保ちながら、同じ量の気体を温めると、体積が増えます。

この関係をシャルルの法則といい、体積は絶対温度に比例します。

V₁/T₁=V₂/T₂

Tは絶対温度です。温度を℃のまま式へ入れないことが重要です。

温めると粒子の運動が激しくなり、同じ体積では圧力が上がる方向に働きます。圧力を一定に保つ場合は、ピストンが動いて気体の占める空間が広がります。

例題:加熱後の体積

27℃で5Lの気体を、圧力一定で87℃まで温めました。変化後の体積を求めます。絶対温度への換算には273を使います。

T₁=27+273=300K、T₂=87+273=360K

V₂=5×360÷300=6L

絶対温度は1.2倍なので、体積も1.2倍です。

5.体積一定:温度と圧力の関係

ここでは容器自体の熱膨張を無視します。硬い密閉容器では、温めても気体の体積は変わりません。同じ量の気体を体積一定で温めると、圧力が上がります。

この場合、圧力は絶対温度に比例します。

P₁/T₁=P₂/T₂

体積が同じまま温めると、粒子の運動が激しくなります。壁への衝突が頻繁になるだけでなく、壁への一回の衝突で伝わる運動量も、平均的には大きくなります。そのため圧力が上がります。運動量は、粒子の質量×速度で表される量です。

例題:冷却後の圧力

27℃、絶対圧力200kPaの気体を、体積一定で−23℃まで冷やしました。換算には273を使います。

T₁=300K、T₂=250K

P₂=200×250÷300≒167kPa

温度が下がったので、圧力も下がります。−23℃を式に直接入れると、意味のない負の圧力を求めてしまいます。

6.圧力・体積・温度が変わるとき

同じ量の理想気体では、3つの関係をまとめて次の式で表せます。ボイル・シャルルの法則と呼ばれます。

P₁V₁/T₁=P₂V₂/T₂

温度が一定ならボイルの法則、圧力が一定ならシャルルの法則、体積が一定なら前節の関係になります。

例題:圧力と温度の両方が変わる

300K、絶対圧力100kPa、体積6Lの気体が、400K、絶対圧力200kPaになりました。気体の量は変わりません。変化後の体積を求めます。

V₂=6×(100÷200)×(400÷300)=4L

圧力が上がる変化は体積を小さくする方向、温度が上がる変化は体積を大きくする方向に働きます。両方の倍率を考えます。

どの式を使うか整理する

一定にする条件 使う式 変化の関係
気体の量・温度 P₁V₁=P₂V₂ 圧力と体積は反比例
気体の量・圧力 V₁/T₁=V₂/T₂ 体積と絶対温度は比例
気体の量・体積 P₁/T₁=P₂/T₂ 圧力と絶対温度は比例
気体の量 P₁V₁/T₁=P₂V₂/T₂ 3つをまとめて扱える
ボイルの法則、シャルルの法則、体積一定時の温度と圧力の関係を比較した模式図
気体の量が一定のとき、何を一定に保つかによる違い(模式図・寸法は非縮尺)

図の容器と粒子は模式図で、容器の寸法は厳密な縮尺ではありません。水色は気体の占める空間を示し、液体ではありません。分子の矢印は運動の向きを表し、長さは運動の激しさを定性的に示しています。絶対温度が2倍でも、分子の速さが2倍になるという意味ではありません。

圧力と体積は、それぞれ変化前後で単位をそろえます。この記事の比例計算では、kPaとLを使っても構いません。後で学ぶ状態方程式では、気体定数に合わせた単位が必要になります。

7.蒸気の濃度を表すvol%

可燃性蒸気と空気が混ざった気体を、混合気といいます。蒸気がどれくらい含まれるかを、体積割合の百分率であるvol%で表すことがあります。

ここでも理想気体として扱い、反応や凝縮は起こらないものとします。成分の体積は同じ温度・圧力で比べます。混合の前後も同じ温度・圧力なら、成分の体積を足して全体の体積を求められます。

蒸気の濃度(vol%)=蒸気の体積÷混合気全体の体積×100

例題:蒸気の体積割合

同じ温度・圧力で測った蒸気2Lと空気98Lを混ぜ、同じ温度・圧力で全体が100Lになった場合です。

蒸気の濃度=2÷100×100=2vol%

分母は空気だけの98Lではなく、蒸気も含む混合気全体の100Lです。液体2Lを加えたという意味でもありません。

ここまでのvol%の計算では、反応や凝縮が起こらない混合気を考えました。実際に液体と蒸気が共存する場合には、蒸発や凝縮によって蒸気の量が変わることがあります。液体と蒸気がつり合う仕組みや蒸気圧については、次のPC03「蒸気圧と沸点」で学びます。

この濃度の読み方を、後で「燃焼範囲」を学ぶときに使います。

押さえるポイント

  • 最初に、気体の量と、温度・体積・圧力のどれが一定か確認する。
  • 気体の法則には絶対圧力と絶対温度を使う。
  • 変化前後の圧力の単位、体積の単位をそろえる。
  • 計算後は、変化の方向と倍率を確かめる。
  • 液体が共存して蒸発・凝縮する場合は、気体の量が一定とは限らない。

確認問題

気体は理想気体として扱い、漏れ・反応・状態変化はないものとします。温度換算には273を使います。

問題1

同じ量の気体を温めたとき、硬い密閉容器アと、圧力一定でピストンが動く容器イの変化として正しいものはどれですか。

  1. アでは体積が増え、イでは圧力が上がる。
  2. アでは圧力が上がり、イでは体積が増える。
  3. アでは圧力が下がり、イでは体積が減る。
  4. どちらも気体の量が増える。
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答え:2

アは体積一定なので圧力が上がり、イは圧力一定なので体積が増えます。1は一定条件に反し、3は変化の方向が逆です。4は、加熱で気体の量が増えるとした点が誤りです。

問題2

この問題では大気圧を100kPaとします。ゲージ圧が150kPaのとき、絶対圧力はどれですか。

  1. 50kPa
  2. 100kPa
  3. 150kPa
  4. 250kPa
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答え:4

絶対圧力は150+100=250kPaです。1は大気圧を引いています。2は大気圧だけ、3はゲージ圧だけの値です。

問題3

27℃から327℃への温度変化について、正しいものはどれですか。

  1. 絶対温度は300Kから600Kになり、2倍になる。
  2. 絶対温度は27Kから327Kになる。
  3. 温度の比は327÷27で求める。
  4. 絶対温度は常にセルシウス温度より273小さい。
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答え:1

この問題では273.15を273に近似し、℃の値に273を加えます。27℃は300K、327℃は600Kです。2と3は℃を絶対温度として扱い、4は換算の方向が逆です。

問題4

絶対圧力120kPa、体積4Lの気体を、温度一定で2Lまで圧縮しました。変化後の絶対圧力はどれですか。

  1. 60kPa
  2. 120kPa
  3. 240kPa
  4. 480kPa
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答え:3

120×4÷2=240kPaです。体積が半分なので圧力は2倍です。1は倍率が逆、2は変化を無視し、4は4倍にしてしまっています。

問題5

27℃で3Lの気体を、圧力一定で127℃まで温めました。変化後の体積はどれですか。

  1. 2.25L
  2. 4L
  3. 6L
  4. 約14.1L
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答え:2

300Kから400Kなので、3×400÷300=4Lです。1は温度比が逆、3は2倍と誤解した値、4は℃の数字で比を取った値です。

問題6

300K、絶対圧力150kPaの気体を、体積一定で400Kまで温めました。変化後の絶対圧力はどれですか。

  1. 112.5kPa
  2. 150kPa
  3. 300kPa
  4. 200kPa
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答え:4

150×400÷300=200kPaです。1は温度比が逆、2は変化を無視し、3は2倍にしています。

問題7

300K、絶対圧力100kPa、体積8Lの気体が、450K、絶対圧力200kPaになりました。気体の量は一定です。変化後の体積はどれですか。

  1. 6L
  2. 8L
  3. 12L
  4. 24L
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答え:1

8×(100÷200)×(450÷300)=6Lです。2は変化を反映していません。3は圧力変化を無視し、4は圧力の倍率を逆にしています。

問題8

同じ温度・圧力で測った可燃性蒸気3Lと空気97Lを混ぜ、同じ温度・圧力で全体が100Lになりました。蒸気の濃度はどれですか。

  1. 0.3vol%
  2. 97vol%
  3. 3vol%
  4. 30vol%
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答え:3

3÷100×100=3vol%です。2は空気の割合、1と4は桁が違います。

次に学ぶ

次は「蒸気圧と沸点」です。液体と蒸気が共存する場合を学び、外からの圧力と沸騰の関係を理解します。

気体の量をmolで表す考え方と、理想気体の状態方程式PV=nRTは、後で「mol」と「気体の量・体積と状態方程式」の記事で学びます。

参考・出典