塩素酸塩類
塩素酸塩類とは、塩素酸(\(\ce{HClO3}\))の水素原子を金属などの陽イオンで置換した化合物の総称です。
不安定な物質で、可燃物や強酸との接触、加熱や衝撃などにより爆発する危険性があります。
具体的な物質の性質についてみていきましょう。
塩素酸カリウム \(\ce{KClO3}\)
主にマッチ、漂白剤、医薬品の原料などに用いられます。
性質
- 光沢のある無色の結晶
- 比重2.3
- 水に溶けにくいが、熱水には溶ける
- 約400℃に加熱すると過塩素酸カリウムと塩化カリウムに分解する
さらに加熱すると、酸素と塩化カリウムに分解する
\begin{eqnarray}
&& \ce{4KClO3 -> 3KClO4 + KCl}\\
&& \ce{3KClO4 -> 3KCl + 6O2 ^}
\end{eqnarray}
可燃物との混合や強酸との接触により爆発の危険があります。
特に、硫黄や赤リンと混合したものは、わずかな刺激でも爆発の危険があります。
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 可燃物や強酸との接触を避ける
- 容器は密栓し、日光を避け冷暗所に保管する
長期間の保存や日光により亜塩素酸カリウムに分解します。
消火方法
注水により冷却消火します。
塩素酸ナトリウム \(\ce{NaClO3}\)
漂白や他の塩素酸塩の原料として用いられます。
性質
- 無色の結晶
- 比重2.5
- 水によく溶ける
- アルコールに溶ける
- 潮解性を有する
- 約300℃に加熱すると分解し、酸素を放出する
潮解したものが紙などに染み込んで乾燥すると、加熱等によって爆発の危険があります。
強酸と接触すると反応して二酸化塩素(\(\ce{ClO2}\))を発生します。
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 可燃物や強酸との接触を避ける
- 容器は密栓し、冷暗所に保管する
潮解性を有するため、特に湿気に注意が必要です。
消火方法
注水により冷却消火します。
塩素酸アンモニウム \(\ce{NH4ClO3}\)
非常に不安定で反応性が高い危険物です。
性質
- 無色の針状結晶
- 比重2.4
- 水に溶けるが、アルコールに溶けにくい
- 潮解性を有する
- 約100℃で分解し、爆発することがある
常温でも爆発の危険性があります。
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 可燃物や強酸との接触を避ける
- 容器は密栓し、冷暗所に保管する
潮解性を有するため湿気に注意します。
爆発性があるため、長期間の保存はできません。
消火方法
注水により冷却消火します。
塩素酸カルシウム \(\ce{Ca(ClO3)2}\)
花火の原料などに用いられます。
性質
- 白色の結晶
- 比重2.7
- 水によく溶け、エタノールにも溶ける
- 潮解性を有する
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 可燃物や強酸との接触を避ける
- 容器は密栓し、冷暗所に保管する
潮解性を有するため湿気に注意します。
消火方法
注水により冷却消火します。
塩素酸バリウム \(\ce{Ba(ClO3)2}\)
花火の原料などに用いられます。
性質
- 白色の粉末
- 比重3.2
- 水に溶ける
- エタノールに溶けにくい
- 炎色反応:緑色
- 約250℃で分解し、酸素を放出する
$$\ce{Ba(ClO3)2 -> BaCl2 + 3O2 ^}$$
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 可燃物や強酸との接触を避ける
- 容器は密栓し、冷暗所に保管する
消火方法
注水により冷却消火します。
塩素酸塩類のまとめ
塩素酸塩類では、水・アルコールへの溶解と潮解性を覚えましょう。
物質名 | 溶解性 | 潮解性 |
塩素酸カリウム | 水に溶けにくいが熱水には溶ける | なし |
塩素酸ナトリウム | 水にもアルコールにも溶ける | あり |
塩素酸アンモニウム | 水に溶けるが、アルコールに溶けにくい | なし |
塩素酸カルシウム | 水にもエタノールにも溶ける | あり |
塩素酸バリウム | 水に溶けるが、エタノールに溶けにくい | なし |