無機過酸化物
無機過酸化物とは、過酸化物イオン(\(\ce{O2^{2-}}\))を含む無機化合物の総称です。
なお、有機過酸化物は第5類危険物、過酸化水素(\(\ce{H2O2}\))は第6類危険物に指定されています。
無機過酸化物は、大きく「アルカリ金属の過酸化物」と「アルカリ土類金属の過酸化物」に分けられます。
アルカリ金属の過酸化物は水と激しく反応して熱と酸素を発生するため、危険性が高いです。
具体的な物質の性質についてみていきましょう。
アルカリ金属の過酸化物
アルカリ土類金属の過酸化物
過酸化カリウム \(\ce{K2O2}\)
性質
- オレンジ色の粉末
- 比重2.0
- 吸湿性が強く、潮解性を有する
- 水と反応して発熱し、水酸化カリウムと酸素を生じる
$$\ce{2K2O2 + 2H2O -> 4KOH + O2 ^}$$
- 約490℃に加熱すると酸化カリウムと酸素に分解する
$$\ce{2K2O2 -> 2K2O + O2 ^}$$
大量の水と反応すると爆発する危険があります。
可燃物や有機物と混合すると、加熱・衝撃等により爆発の危険があります。
皮膚や粘膜を腐食します。
保管方法
- 容器は密栓し、水分の侵入を避ける
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 可燃物や有機物との接触を避ける
潮解性を有し、水との反応で発熱するため、特に注意が必要です。
消火方法
乾燥砂などで窒息消火します。
注水消火は不適です。
過酸化ナトリウム \(\ce{Na2O2}\)
性質
- 黄白色の粉末
- 比重2.9
- 吸湿性が強い(潮解性はない)
- 水と反応して発熱し、水酸化ナトリウムと酸素を生じる
- 約660℃に加熱すると分解し、酸素を放出する
- 融解すると白金\(\ce{Pt}\)を腐食するため、ニッケルや金のるつぼを用います。
大量の水と反応すると爆発する危険があります。
皮膚や粘膜を腐食します。
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 可燃物や酸との接触を避ける
- 容器は密栓し、冷暗所に保管する
消火方法
乾燥砂などで窒息消火します。
注水消火は不適です。
過酸化マグネシウム \(\ce{MgO2}\)
性質
- 白色の粉末
- 比重3.0
- 水と反応して分解し、水酸化マグネシウムと酸素を発生する
$$\ce{MgO2 + 2H2O -> Mg(OH)2 + O2 ^}$$
- 希酸に溶けて過酸化水素を発生する
- 加熱すると分解し、酸化マグネシウムと酸素を発生する
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 酸との接触を避ける
- 容器は密栓し、冷暗所に保管する
消火方法
乾燥砂などで窒息消火します。
アルカリ金属の過酸化物に比べると水との反応性はやや低いものの、注水消火は好ましくありません。
過酸化カルシウム \(\ce{CaO2}\)
農業、環境、食品など様々な用途で用いられています。
性質
- 白色の粉末
- 比重2.9
- 水やアルコールに溶けにくい
- 希酸に溶けて過酸化水素を発生する
- 約275℃に加熱すると爆発的に分解し、酸素を発生する
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 酸との接触を避ける
- 容器は密栓し、冷暗所に保管する
潮解性を有するため湿気に注意します。
消火方法
乾燥砂などで窒息消火します。
過酸化バリウム \(\ce{BaO2}\)
酸化剤、漂白剤、花火の原料などに用いられます。
性質
- 灰白色の粉末
- 比重4.96
- 水に溶けにくい
- 熱水と反応して酸素を発生する
- 酸に溶けて過酸化水素を発生する
- 炎色反応:緑色
- 約840℃で分解し、酸素を放出する
$$\ce{2BaO2 -> 2BaO + O2 ^}$$
人体に有毒な物質です。
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 酸との接触を避ける
- 容器は密栓し、冷暗所に保管する
消火方法
乾燥砂などで窒息消火します。
無機過酸化物のまとめ
無機過酸化物では色や反応性を覚えましょう。
水と反応するため、いずれも乾燥砂などで窒息消火します。
物質名 | 色 | 反応 | 潮解性 |
過酸化カリウム | オレンジ | 水と反応して発熱し、酸素を発生 | あり |
過酸化ナトリウム | 黄白色 | なし | |
過酸化マグネシウム | 白色 | 酸に溶けて過酸化水素を発生 | なし |
過酸化カルシウム | 白色 | なし | |
過酸化バリウム | 灰白色 | なし |