硝酸塩類
硝酸塩類とは、硝酸(\(\ce{HNO3}\))の水素原子を金属などの陽イオンで置換した化合物の総称です。
爆薬として用いられる物質が多く含まれます。
具体的な物質の性質についてみていきましょう。
硝酸カリウム \(\ce{KNO3}\)
黒色火薬の原料、防腐剤、肥料などに用いられます。
硝石(しょうせき)として天然に産出し、古くから利用されてきました。
性質
- 無色の結晶
- 比重2.1
- 水によく溶ける
- 約400℃に加熱すると亜硝酸カリウムと酸素に分解する
$$\ce{2KNO3 -> 2KNO2 + O2 ^}$$
可燃物や有機物の混合すると、刺激により爆発する危険があります。
可燃物である木炭と硫黄に、硝酸カリウムなどの酸化剤を加えたものを黒色火薬といいます。
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 可燃物や有機物との接触を避ける
- 容器は密栓する
消火方法
注水により冷却消火します。
硝酸ナトリウム \(\ce{NaNO3}\)
爆薬の原料、防腐剤、肥料などに用いられます。
チリ硝石として天然に採掘されます。
性質
- 無色の結晶
- 比重2.3
- 水によく溶ける
- 潮解性を有する
- アルコールには溶けにくい
- 約380℃に加熱すると亜硝酸ナトリウムと酸素に分解する
反応性は硝酸カリウムに比べやや弱いです。
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 可燃物や有機物との接触を避ける
- 容器は密栓する
潮解性を有するため、湿気に注意が必要です。
消火方法
注水により冷却消火します。
硝酸アンモニウム \(\ce{NH4NO3}\)
爆薬の原料や肥料などに用いられます。
性質
- 無色の結晶
- 比重1.8
- 水によく溶け、吸熱反応を起こす
- メタノール、エタノールにも溶ける
- 吸湿性があり、潮解性を有する
- 約210℃に加熱すると亜酸化窒素(一酸化二窒素)と水に分解する
さらに加熱すると、窒素、酸素、水に爆発的に分解する
\begin{eqnarray}
&& \ce{NH4NO3 -> N2O + 2H2O}\\
&& \ce{2NH4NO3 -> 2N2 ^ + O2 ^ + 4H2O}
\end{eqnarray}
亜酸化窒素\(N2O\)は笑気ガスとも呼ばれ、麻酔に用いられます。
単独でも加熱や衝撃により爆発することがあります。
可燃物や有機物、金属粉などと混合すると更に爆発の危険が高くなります。
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 可燃物や有機物との接触を避ける
- 容器は密栓する
消火方法
注水により冷却消火します。
硝酸塩類のまとめ
硝酸塩類はいずれも水によく溶けます。
物質名 | 溶解性 | 潮解性 |
硝酸カリウム | 水によく溶ける | なし |
硝酸ナトリウム | 水によく溶ける | あり |
硝酸アンモニウム | 水によく溶ける(吸熱反応) メタノール・エタノールにも溶ける |
あり |