硫化リン
硫化リンは、リン(\(\ce{P}\))と硫黄(\(\ce{S}\))の化合物の総称です。
リンと硫黄の組成比に応じて分類されます。
各物質の性質についてみていきましょう。
三硫化四リン \(\ce{P4S3}\)
マッチの原料として用いられます。塩素酸カリウム(第1類)と混合したものを硫化リンマッチといいます。
性質
- 黄色の結晶
- 比重2.03
- 発火点:100℃、融点:172℃、沸点:407℃
- 水に溶けず、二硫化炭素およびベンゼンに溶ける
- 熱水と反応し、硫化水素(\(\ce{H2S}\))とリン酸を生じる
冷水とは反応しません。
- 燃焼すると亜硫酸ガス(\(\ce{SO2}\))とリン酸化物を生じる
$$\ce{P4S3 + 8O2 -> P4O10 + 3SO2 ^}$$
硫化水素は腐卵臭のある可燃性のガス、亜硫酸ガス(二酸化硫黄)は刺激臭のある不燃性のガス。いずれも無色で有毒です。
分子にHを含む硫化水素は水との反応で生じる、と覚えておきましょう。
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 酸化剤との接触を避ける
- 容器は密栓し、換気のよい冷暗所に保管する
酸化剤や金属粉と混合すると爆発の危険があります。
消火方法
乾燥砂などにより窒息消火します。
水系消火剤は硫化水素を発生するため使用を避けます。
五硫化二リン \(\ce{P2S5}\)
\(\ce{P4S10}\)とも。
硫化剤として用いられます。
性質
- 淡黄色の結晶
- 比重2.09
- 発火点:142℃、融点:290℃、沸点:514℃
- 二硫化炭素に溶ける
- 水と反応して徐々に加水分解し、硫化水素とリン酸を生じる
$$\ce{P4S10 + 16H2O -> 4H3PO4 + 10H2S ^}$$
- 燃焼すると亜硫酸ガスとリン酸化物を生じる
$$\ce{P4S10 + 15O2 -> P4O10 + 10SO2 ^}$$
五硫化二リンは吸湿性があり、空気中の水分と反応して分解、硫化水素を発生するため腐乱臭をもちます。
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 酸化剤との接触を避ける
- 容器は密栓し、換気のよい冷暗所に保管する
金属粉と混合すると自然発火の危険があります。
消火方法
乾燥砂などにより窒息消火します。
七硫化四リン \(\ce{P4S7}\)
性質
- 淡黄色の結晶
- 比重2.19
- 融点:310℃、沸点:523℃
- 二硫化炭素にわずかに溶ける
- 水とは徐々に、熱水とは速やかに反応して加水分解し、硫化水素とリン酸を生じる
- 燃焼すると亜硫酸ガスとリン酸化物を生じる
保管方法
- 加熱・衝撃・摩擦を避ける
- 酸化剤との接触を避ける
- 容器は密栓し、換気のよい冷暗所に保管する
酸化剤と激しく反応します。強い摩擦により発火の危険があります。
消火方法
乾燥砂などにより窒息消火します。
硫化リンのまとめ
硫化リンは、水(または熱水)と反応すると硫化水素を発生、燃焼すると亜硫酸ガスを発生します。
水と反応するため、乾燥砂や不活性ガスを用いて窒息消火します。
物質名 | 溶解性 |
三硫化四リン\(\ce{P4S3}\) | ベンゼン・二硫化炭素に溶ける |
五硫化二リン\(\ce{P2S5}\) | 二硫化炭素に溶ける |
七硫化四リン\(\ce{P4S7}\) | 二硫化炭素にわずかに溶ける |