金属粉
消防法別表第一備考5および規則第一条の三第2項より、金属粉は次のように定義されています。
金属粉とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄及びマグネシウム以外の金属の粉をいい、以下のものを除く。
- 銅粉
- ニッケル粉
- 目開きが百五十マイクロメートルの網ふるいを通過するものが五十パーセント未満のもの
鉄粉の場合は、ふるいの目が53μmなので注意してください。
金属粉の対象となる元素は上表を参考にしてください。
斜線部は非金属元素、×印は対象外の元素です。
金属粉のなかでも、特にアルミニウム粉および亜鉛粉が重要です。
具体的な性質についてみていきましょう。
アルミニウム粉 \(\ce{Al}\)
顔料、塗料、粉末冶金などに用いられます。
アルミニウム粉末と金属酸化物を混合したものは高熱と光をともなって激しく反応します。例えば酸化鉄の場合:
$$\ce{2Al + Fe2O3 -> Al2O3 + 2Fe + 852kJ}$$
これをテルミット反応と呼び、溶接や金属酸化物の還元などに利用されます。
性質
- 銀白色の粉末
- 比重2.7
- 融点:660℃、沸点:2,470℃
- 水と徐々に反応して水素を発生する
$$\ce{2Al + 6H2O -> 2Al(OH)3 + 3H2 ^}$$
- 酸および強アルカリと反応し、水素を発生する
$$例①:\ce{2Al + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2 ^}$$
$$例②:\ce{2Al + 2NaOH + 6H2O -> 2Na[Al(OH)4] + 3H2 ^}$$
このように酸・アルカリの両方と反応するものを両性元素といい、アルミニウム・亜鉛・スズ・鉛の4つが該当します。
アルミニウム粉は反応性が高く、空気中の水分やハロゲン元素と反応して発火する危険があります。
保管方法
- 湿気を避け、容器は密封する
- 酸化剤との接触を避ける
消火方法
乾燥砂または金属火災用消火剤により窒息消火します。
水系消火剤やハロゲン化物消火剤とは反応してしまうため使用厳禁です。
亜鉛粉 \(\ce{Zn}\)
防錆塗料、還元剤などに用いられます。
アルミニウム粉に似た性質を持ちますが、危険性はやや低いです。
性質
- 青みがかった銀白色の粉末
- 比重7.1
- 融点:419.5℃、沸点:907℃
- 常温の水とは反応しないが、高温の水蒸気と反応して水素を発生する
$$\ce{Zn + H2O -> ZnO + H2 ^}$$
- 酸および強アルカリと反応し、水素を発生する
$$例①:\ce{Zn + 2HCl -> ZnCl2 + H2 ^}$$
$$例②:\ce{Zn + 2NaOH + 2H2O -> Na2[Zn(OH)4] + H2 ^}$$
亜鉛も両性元素です。
空気中で酸化被膜を形成します。
ハロゲンとは室温の乾燥状態では反応しませんが、水分があると激しく反応します。
硫黄とは高温で反応して硫化亜鉛(\(\ce{ZnS}\))を生成します。
保管方法
- 湿気を避け、容器は密封する
- 酸化剤との接触を避ける
消火方法
乾燥砂または金属火災用消火剤により窒息消火します。
水系消火剤やハロゲン化物消火剤とは反応してしまうため使用厳禁です。