運搬と移送の基準

危険物の運搬・移送の基準を学びましょう。

運搬と移送の違い

危険物の輸送方法は大きく2つに分けられます。

  • 運搬:トラック等の車両で容器に入れた危険物を運ぶこと
  • 移送移動タンク貯蔵所によって危険物を運ぶこと

運搬と移送でそれぞれ異なる基準が適用されるので、区別して理解しましょう。

運搬
移送

 

運搬の基準

運搬とは、車両等で危険物を運ぶことをいいます。

運搬

危険物の貯蔵または取扱いについては、指定数量以上の場合のみ消防法の規制対象となり、指定数量未満の場合は市町村条例による規制を受けます。

一方、運搬については指定数量に関係なく消防法による規制を受けます。

運搬容器

危険物を収納する容器に関して、以下の基準があります。

構造
  • 堅固(けんご)で用意に破損するおそれがないこと
  • 容器の口から収納した危険物が漏れるおそれがないこと
材質 鋼板、アルミニウム板、ブリキ板、ガラス、金属板、紙、プラスチック、ファイバー板、ゴム類、合成繊維、麻、木または陶磁器

危険物が漏れないこと、容器と危険物が反応しないことが求められます。

 

容器の外面には、以下の内容を表示します。(規則第44条)

  1. 危険物の品名
  2. 危険等級
  3. 化学名
  4. 第4類危険物のうち水溶性のものには「水溶性」
  5. 数量
  6. 危険物に応じた注意事項

運搬容器 表示内容

表示する注意事項は下記の通りです。

類別 品名など 注意事項
第1類 アルカリ金属の過酸化物 「火気・衝撃注意」「可燃物接触注意」「禁水」
 その他 「火気・衝撃注意」「可燃物接触注意」
第2類 鉄粉、金属粉、マグネシウム 「火気注意」「禁水」
引火性固体 「火気厳禁」
 その他 「火気注意」
第3類 自然発火性物品 「空気接触厳禁」「火気厳禁」
禁水性物品 「禁水」
第4類 すべて 「火気厳禁」
第5類 すべて 「火気厳禁」「衝撃注意」
第6類 すべて 「可燃物接触注意」

掲示板と共通する部分もあります。

 

容器への収納

原則として、危険物は運搬容器に収納して積載します。

ただし、

  • 塊状の硫黄等を運搬するため積載する場合
  • 同一の敷地内にある他の製造所等へ運搬するため積載する場合

は例外です。

運搬容器は密封します。ただし、危険物からのガスの発生により圧力が上昇するおそれのある場合は、発生するガスが毒性または引火性を持たない場合に限りガス抜き口を設けた運搬容器を用いることができます。

 

容器への収納率は次のように規定されています。(規則第43条の3)

  • 固体:運搬容器の内容積の95%以下
  • 液体:運搬容器の内容積の98%以下、かつ、55℃の温度において漏れないように十分な空間容積を有する

収納率

物体は熱により膨張するので、満タンにしてしまうと漏れの危険があります。

 

積載方法

危険物の漏れや災害等を防止するため、以下の規定があります。

  • 運搬容器が落下し、転倒し、破損しないように積載する
  • 運搬容器は収納口を上方に向けて積載する
  • 運搬容器を積み重ねる場合は、高さ3m以下とする

積載のルール

特定の危険物については、その性質に応じて以下の処置をしなくてはいけません。

処置内容 対象の危険物
日光の直射を避けるため、遮光性の被覆で覆う
  • 第1類危険物
  • 第3類危険物のうち、自然発火性物品
  • 第4類危険物のうち、特殊引火物
  • 第5類危険物
  • 第6類危険物
雨水の侵入を防ぐため、防水性の被覆で覆う
  • 第1類危険物のうち、アルカリ金属の過酸化物
  • 第2類危険物のうち、鉄粉・金属粉・マグネシウム
  • 第3類危険物のうち、禁水性物品
保冷コンテナに収納するなど、適正な温度管理 第5類危険物のうち、55℃以下の温度で分解するおそれのあるもの

混載の禁止

危険物は、類を異にするその他の危険物または災害を発生させるおそれのある物品と混載することができません。(政令第29条第6号)

  • 規則別表第四において、混載を禁止されている危険物
  • 高圧ガス保安法第2条各号に掲げる高圧ガス

ただし、

  • 指定数量1/10以下の危険物
  • 内容量120L未満の容器に充填された高圧ガス

については適用されないことになっています。少量であれば混載してもよい、ということです。

 

別表第4は次のような表です。

別表第4 混載

この表のままではなく、

  1. 足して「7」になる組み合わせ
  2. 第2類と第4類と第5類

は混載してもよい、と覚えましょう。

例えば、第1類と第5類は、1+5=6なので混載NGです。第1類と第6類は、1+6=7なので混載OKです。

第4類と第5類は、4+5=9ですが、2つ目のルールから混載OKです。

 

運搬方法

運搬方法に関する技術上の基準です。(政令第30条)

  • 運搬容器が著しく摩擦または動揺を起さないように運搬する
  • 災害が発生するおそれのある場合は、災害を防止するため応急の措置を講ずるとともに、消防機関その他の関係機関に通報する

さらに、指定数量以上の危険物を運搬する場合に限り、以下の基準が適用されます。

  • 車両前後の見やすい箇所に標識を掲げる
  • 積替、休憩、故障等のため車両を一時停止させるときは、安全な場所を選び、運搬する危険物の保安に注意する
  • 運搬する危険物に適応する消火設備を備える

 

掲げる標識に関しては、規則第47条に規定されています。

  • 大きさ:0.3m平方
  • 色:黒色の地黄色の文字(反射塗料等)
  • 内容:「危」と表示

運搬の標識

移動タンク貯蔵所の標識の場合は、0.3~0.4mとサイズが異なるので注意!

 

移送の基準

移送とは、移動タンク貯蔵所で危険物を運ぶことをいいます。

移送

書類の備え付け

車両には以下の書類を備え付けておかなくてはいけません。

  1. 完成検査済証
  2. 定期点検記録
  3. 譲渡・引渡の届出書
  4. 品名・数量または指定数量の倍数の変更届出書

コピーは不可です。

危険物取扱者

危険物を移送する移動タンク貯蔵所には、当該危険物を取り扱うことのできる危険物取扱者を乗車させなくてはいけません。

さらに、危険物取扱者免状を携帯する必要があります。コピーは不可です。

なお、車両の運転は危険物取扱者でなくても問題ありません。

移送前の点検

危険物を移送する者は、移送の開始前に移動貯蔵タンクの

  • 底弁その他の弁
  • マンホールおよび注入口のふた
  • 消火器

等を十分に点検します。

運転の基準

次のような長時間の移送の場合には、2名以上の運転要員を確保しなくてはいけません。

  • 連続運転時間が4時間を超える
  • 1日当たりの運転時間が9時間を超える

移動タンク貯蔵所を休憩、故障等のため一時停止させるときは、安全な場所を選びます。

移送の経路等の通知

アルキルアルミニウム、アルキルリチウム等を移送する場合には、移送の経路等を記載した書面を関係消防機関に送付するとともに、当該書面の写しを携帯し、記載された内容に従わなくてはいけません。